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第1期電王戦、始まる [将棋]

ニコニコ動画で将棋のタイトル戦が中継されるようになったきっかけともいえる、将棋電王戦が開催されて、早いものでもう5年が経つ。

昨年、一部では「プロ棋士による将棋ソフト研究発表会」などと揶揄されながらも、とりあえずプロ棋士側の3勝2敗という形で決着がついて、負けっぱなしだった棋士側がなんとか勝ち越して面目を保ち、めでたしめでたし・・・となるのかと思いきや、今年もまた行われることと相成った。
 今期からは、昨年創設された新棋戦「叡王戦」の優勝者が、ドワンゴが主催しているコンピュータ将棋の大会「将棋電王トーナメント」で、優勝した将棋ソフトと二番勝負を行う、という規定になっている。
 叡王戦の参加者はエントリー制だ、という話を聞いたので「若手棋士中心の棋戦になるのかな」と思っていたら、永世名人資格保持者の谷川九段、森内九段をはじめ、ほぼ全員の棋士が、段位別に行われる予選に名を連ねているので、非常に驚いた。フリークラスのベテラン棋士まで参加しているので、
「万が一にも優勝したらどうするの?ソフト相手に持ち時間八時間使って2日間、戦わなきゃいけないんですよ先生」と思わず聞いてみたくなったものだ。(ちなみに来月その棋士の一人に会う予定になっているので冗談交じりにぜひ聞いてみたい。もちろん自分の実力じゃそこまで勝ち上がれないと思っているのだろうが)
 そうして羽生名人と渡辺竜王、この二人はエントリーされていない。以前に、電王戦に出来ればはタイトル保持者は出したくない、というようなことを谷川九段が話していたので「ああ、タイトル保持者は出ないのかな」と思っていたところ、郷田王将と、棋戦開始時は竜王だった糸谷八段もちゃんとエントリーされている。
 渡辺竜王は自身のブログで「あくまで自分の意志で参加しないことを決めた」と表明しているが、やはりほぼ全員の棋士が参戦しているのにも関わらず、なぜ現在の棋界のトップ2である羽生渡辺の両雄が出ていないのかが気になるところではある。(渡辺竜王以外のA級棋士は全員が叡王戦に参加している)

 まあ何はともあれ第1期叡王戦は無事行われ、山崎隆之八段が優勝した。決勝三番勝負では郷田真隆王将に連勝した。タイトルホルダーを負かしての優勝は彼の底力を見せつけるにふさわしいものであった。
 そして一方の将棋ソフトの代表は、もうすっかりおなじみのPonanzaである。これまでの電王戦に既に三回出場してすべて勝っている最強ソフトである。

 今期の電王戦では持ち時間が8時間ということになっている。以前に菅井五段(当時)が同じ持ち時間で徹夜で将棋ソフト習甦と対戦したことがあったが、今回は二日制の対局である。一日目の18時になった時点で人間側が封じ手を行う、ということになっている。
 個人的にはこの封じ手をいかに利用するかが、コンピュータに勝つためのポイントになるように思っていた。・・・別に「古畑任三郎」に出てきた米沢八段のように不正して勝つ、ということではなく・・・封じ手は人間側が必ずやるものだと決まっているから、事前に練習対局でPonanzaの得意の戦型を調べておき、想定される局面の中からその十何手後かの後に人間が優勢になるような手順を見つけておいて(まあそれでも確実に勝てる保証はないが)、その局面に誘導した時点で敢えて用意の一手を指さずに封じ手にするのである。コンピュータソフトは特に中盤だと同じ局面だと同じ手を繰り返し次の一手として選ぶ傾向がある。もし事前研究で山崎八段が自分が指しやすいと思うような順を見つけているなら、その局面までは一日目まで指しておいて、用意している手を封じ手にすれば、勝てるかどうかはともかくとして、自分の指したいような展開に持ち込んで二日目での勝負にできるのではないか、などと想像していたのである。

 ところが、実際に行われた第一局ではすでに一日目の夕方にはPonanzaが優勢の局面になっていたようだ。先崎学九段の観戦記によれば、33手目▲5五同角の局面では後手に思わしい手がないようで、山崎八段は△2五飛と勝負に出たが▲3三角成と切られた手に△同金とした手が明確な敗着となってしまった。
 しかしこの次の先手Ponanzaの指した手が、驚くべき程の好手順なのだ。
 ▲8二歩成△同銀▲6五桂である。一見、飛車で桂馬をただで取られてしまいそうなのだが6五同飛には▲2二歩で先手の攻めがつながる。かといって5三桂不成の筋を△5二歩などと受けたりすると▲8五飛という手が飛んでくる。これが銀取りと5三桂不成の王手飛車の両方の狙いが受けづらい。直前に山崎さんが指した手が疑問手だったとはいえ、こんなに鋭い手順ではっきり優勢に持ち込まれてしまっては、どちらがプロなのかわからない状態である。山崎八段は次の一手▲3一角を封じ手にしたが、こう打つようではもうすでに先手が優勢で、2日目の将棋は山崎八段がなんとか先手玉に嫌味をつけようと反撃に出るが、Ponanzaに冷静に対処され優勢を拡大され、いいところなく後手投了となった。

 さて、改めて先崎九段の観戦記を読んでみると、もう完全にコンピュータのほうがプロより上だと宣言したのも同様な書き方であった。先日、囲碁の方でも韓国のトッププロであるイ・セドル九段がグーグル社開発のアルファ碁に1勝4敗と負け越した流れもあってか、これほどはっきりと現役の高段プロによる敗北宣言が出されたのは初めてなのではないだろうか。

 だが一つだけ突っ込みを入れたくなるとすれば、次の箇所である。

だからといって棋士達がコンピュータとの対決を嫌がるかというと、むしろ逆である。そもそも棋士は、自分より強い者と闘うのが好きなのだ。そりゃ負けるのは嫌だ。だが強い相手に立ち向かってゆくのは、喜びでもあるのである。そうした「よい精神」を棋士は皆持っている(中略)

どちらが上ではなく、今後は、我々棋士は常にチャレンジャーである。よいではないか。向かっていこうじゃないか。憎き(強いからという意味で)コンピュータに一泡ふかせてやろうじゃないか。もともと、将棋を覚えた初心者のころから今まで強い相手と指し、負けて強くなってきたんだ。その繰り返しで今まできたんだ。さらに上がいる。指せる。光栄じゃないか。だいいち、気が楽だ。


 もう棋士全体がそういう認識なら、流石にもう羽生さんとPonanzaの対戦があってもいいはず・・・ですよねえ。「よい精神」を持つ棋士の代表みたいなもんでしょ。羽生さんって
 (いつやるの?今でしょ!)

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