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棋士たちの敗北(3)ーGone with the wind- [将棋]

 だいぶ間隔があいてしまったが、もう少しこのテーマについ書いておきたいと思う。

 さて将棋界で今一番注目を浴びている人物といえば…そう、藤井聡太四段である。
 去年の10月付で新四段となった彼だが、たまたま12月になるまで公式戦の対局が決まらなかった。そして12月24日に行われた藤井四段の公式戦第一局は、第30期竜王戦の予選で、対戦相手は奇しくも彼が新四段になるまで最年少棋士の記録保持者だった加藤一二三九段である。加藤九段の得意戦法である相矢倉を後手番で堂々と受けて立った藤井四段だが、加藤九段の攻めを受け切ったのちに反撃に出て、見事に初陣を飾った。対局後のインタビューでも加藤九段も藤井四段の才能を高く評価していたのだが、しかしこの初戦の後半年余りの間、藤井少年が公式戦をずっと勝ち続けて、神谷広志八段の持つ最多連勝記録の28を更新してしまうほどになるとは、誰も想像していなかっただろう。
 もっとも、将棋界の棋戦のシステム上、連勝すること自体が棋戦優勝やタイトル獲得に直結するわけではないので、藤井四段自身や師匠である杉本昌隆七段も「連勝記録を更新できたこと自体は幸運なことで嬉しいが、当面の目標はタイトル戦に出て、タイトルを取れるようになることだ」と述べていた。一時期、藤井四段が連勝を続けるたびにテレビ番組で取り上げられ、「このまま勝ち続けて何かタイトルを取ってしまうのではないか」などと騒がれていたものだが、当の本人はいたってシビアに自分の実力を見極めていたようである(しかしそういうところもまた凄いな、と思えるのだが)。竜王戦の決勝トーナメントで佐々木勇気六段に敗れて連勝は29で止まり、その後も王位のタイトルを獲得した菅井竜也七段や、念願のA級八段になった豊島将之八段ら若き強豪にも善戦むなしく敗れてしまい、中学生でのタイトル獲得はなしえないこととなった。しかしこれからも藤井将棋に期待する人々は数多く居続けることだろう。
 何しろデビューしたばかりの新人棋士が、デビュー戦以降ずっと勝ち続けて20連勝以上してしまうなんて前例はなく(それまでのデビュー戦からの連勝記録は10であった)、しかもその新人棋士が最年少の中学生棋士だとあっては「とんでもない天才が現れた」と周囲が騒がないはずもなかろう。こうして藤井聡太という少年は将棋界という枠を飛び越えて、一躍時の人となったわけである。
 そして、その藤井ブームという大きな風と共に、もはや多くの人々の脳裏から忘れ去られようとしているのが、去年の竜王戦の直前に起こった三浦弘行九段の出場停止処分をめぐる一連の騒動であろう。(続く)
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