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電王戦FINALの前に思う(5) [将棋]

 内館牧子氏が2013年の将棋世界7月号にこの「精神文化を学べ」というエッセイを記載した。第2回電王戦の第4戦目の塚田泰明九段とPuella・αの後に行われた感想戦(といっても実際に本来の感想戦をやるわけではないので、おそらく終局後の感想を取材担当の記者が塚田九段とソフト開発者の伊藤英紀氏にインタビューしたときのことを言っているのだろう)において伊藤英紀氏が「前の2局に比べると、最後はつまらない将棋になってしまった」という非礼な発言をしたことが塚田九段を泣かせた、という週刊新潮の記事を読んだ内館氏が「50にもなって教養がないなぁ、相手するだけ無駄だわ」等、批判というより中傷するような表現になっている。
 しかしそもそも内館氏は実際にこのときの様子をきちんとニコニコ動画のタイムシフト等で確認したのであろうか。見ていないのであれば、将棋世界の編集長なり将棋連盟の理事なりに依頼して映像で確認させてもらってから書くべきであろう。実際に塚田九段が感極まって涙を流したのは、伊藤氏が局後の感想を述べる前の話だ。
 そしてあるベテラン棋士が「棋士はつまらない将棋とは絶対に言わない」といったというのも根拠があまりない発言である。実際、自分の構想ミスのせいなどで自分にとって不本意な展開になった時に「つまらない将棋にしてしまった」という表現を用いることは普通にある。具体的な指し手そのものをいうのではなく、相手との一連の手順のやり取りののちに出来上がった局面を見て「つまらない将棋にした」と感想を述べるものだ。
 内館氏は伊藤氏の非礼さと対照的な例として囲碁の井山祐太六冠(当時)を引き合いに出しているが、これまた比較する対象としてはちょっと無理がある。井山六冠はその対局に勝っているのに対して、伊藤氏は「入玉対策がなおざりになった」せいで最終的に勝ちを逃して引き分けに持ち込まれたのである。自分のプログラミングが完全ではなかったことに対する反省の弁を述べたまでのことだ。塚田九段の指し方をバカにしているような印象は、少なくともこの時の発言からは受け取れないのである。

 しかし事実と違う週刊誌の記事ネタをうのみにして書いた内館氏はさておき、もっと問題なことは、この「精神文化を学べ」というエッセイが、そのまま将棋世界に載せられている、ということだろう。内館さんが詳しい事情を知らないのはまだ理解できるが・・・将棋世界って日本将棋連盟が発行している機関誌ですよね・・・編集長や谷川会長、その他の理事の方々はこのエッセイに関してまったくノータッチだったのだろうか。(常識的に考えてそういうことはあり得ない。おそらく内容をすべて承知の上で掲載したのだろうと思われる。)
 このエッセイを読んで不服を感じた伊藤英紀氏は、しばらくして弁護士を通じて将棋連盟に謝罪を求めたが、出版社に当たるマイナビは話し合いには応じたらしいが、将棋連盟のほうは話し合い自体しようとはしなかったようで、事態を重く見た伊藤氏は伊藤氏のブログ「A級リーグ指し手一号」にあるとおり、日本将棋連盟、株式会社マイナビ、内館牧子の三者を名誉毀損で提訴したのだった。
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