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信念の塊 [日記・雑感]

私が大学時代から何となく好きで読んでいる作家のひとりに、村上龍がいる。
最初に読んだのは大学に入る前、予備校の自習室で勉強とはおよそ関係のない本を読み時間をつぶしていた時期(要は現実逃避である)に読んだ毎度おなじみ「限りなく透明に近いブルー」であったが、その内容のすさまじいのは何となくわかるのだが(福生で若者が黒人らとドラッグと乱交に明け暮れる日々)、残念ながら当時の私にはその作品の良さがさっぱり理解できなかった。
 しかしその後龍さんのエッセイ「すべての男は消耗品である」に出会い、彼がなぜこのような小説を書いたのか、彼の世の中に対する視線や考え方を読むにつれて何となくだが理解できるようになり、やがて彼のファンになっていった次第である。



24歳で芥川賞をとった村上龍も、もう63歳になった。
21世紀に突入するあたりから龍さんは経済に関心を持ち出したのだろうか、「すべての男は消耗品である」シリーズでもやたらと経済に関する話題が出始めた。まあ現代社会を語るうえで経済を無視することはできないからそれはそれでいいのだが、何やら若いころの論理的な破天荒さ(矛盾しているようだがこういう表現が意外とあっている)がどこかへ消えて行ってしまったようで寂しい気もする。まあ年とともに穏やかになってきた、ということかな。

 ところで、村上龍が芥川賞を取った昭和51年に、いったん好きで入った大学を親に内緒で中退し別な大学に入りなおしてまだ就職活動中だった、同い年の63歳の男性が、今もそれこそ寝る間も惜しんで、将来の日本のために熱弁をふるい、執筆活動をしている。
 独立総合研究所社長で近畿大学客員教授もしている、青山繁晴さんである。
 
 私が彼の名を知ったのは、私の母の話を通じてである。
「なんかねえ、水曜日の夕方に、ものすごくはっきりとものをいうコメンテーターの人がいるの。ああいう人、いいねえ」
 5年ほど前だろうか。もともとワイドショーやバラエティ的なテレビ番組がきらいで、今でもFMラジオを聞きながら家事をやるタイプの母なのだが、なぜか水曜日の5時になると必ずテレビを見に自分の部屋に入ってゆくようになった。毎週のように「青山さん青山さん」というので私も気になって、関西テレビの「アンカー」という番組の青山さんの出るコーナーを見てみた。
 いや、すごい。ものすごい信念の持ち主だ。
 「信念」というとある程度世間で活躍しているような人物ならば、皆それなりに持っているような感覚に襲われるが、一見立派な考えの持ち主の人でもいざ自分にとって都合が悪くなったりすると、けっこう逃げ腰になったり保身に走ったりするものである。別にそれを責められるわけでもなく、悲しいながらそれが人間のエゴイズムというものだ。だが、青山さんの前では、そんなものはお恥ずかしくて信念などとは呼べない代物だ。
(まさに吹けば飛ぶよな信念、とでもいうのかな)

 特に東日本大震災と福島の原発事故のあった時の、彼の熱弁ぶりは強烈であった。
 「ぼくはね、身の危険を承知で自分でカメラを持ち込んで、福島の事故現場に入れる限り中に入って、事実を取材してありのままを、皆さんに知ってもらおうと思って報告してるんですよ。
それなのに、先日政府の内情に詳しいぼくの知人から連絡があって「おい青山、気を付けたほうがいいぞ。あいつ邪魔だから逮捕しろって言ってる閣僚がいるぞ」っていう話なんですよ。要するに余計な事しゃべるなっていうことでしょ!これだけの被害にあって苦しんでる方がたくさんいて、皆さんがちゃんとした情報を一刻も早く手に入れたい、と思っているのに、政府の立場が悪くなるからと言って国民に事実を知らせないで、何が民主主義なんですか!それと政府に言われるからと言って取材しなかったり、きちんと記事を書かない記者も記者ですよ!報道の役割がきちんと果たされていないじゃないですか。」

 あの時の菅直人内閣の震災後の被害への対応のひどさは、多くのマスコミが取り上げて問題視していたものだが、それでもどこかで、あくまで地震と津波の規模が従来の想定の範囲を大幅に超えてしまったのでそれもやむを得ないのだ、という論調が全体的にあったような気がする。
 だが、青山繁晴という人の目から見れば、そんな論調すらも実はご都合主義のでっち上げだというのだから、恐れ入る。
 
 テレビで熱弁する青山さんの言葉に私も大いに興味を持った。
 そして青山さんが本も何冊か出していると知り、電子書籍リーダーで読めるものを買ってみることにした。
 最初に読んだのは「ぼくらの祖国」という本だった。
(続く)

ぼくらの祖国 (扶桑社BOOKS)

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  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2011/12/27
  • メディア: Kindle版



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