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電王戦FINALの前に思う(余談) [将棋]

2月16日にニコ生で放送された電王戦リベンジマッチ森下卓九段vsツツカナに関する発表 を見ての感想を以下に述べます。(感想ですから呟き気味に列記しておきます)

・・・まああの局面は確かに森下九段がはっきり優勢である、ということには異議はない。
だから継ぎ盤を使って指した意義はあったし、朝の5時過ぎまでほぼ徹夜状態で、お疲れさまでしたと言いたい。

 だがいったん指し掛けと立会人の片上理事が判断したのだから、やはり一応どんな形でもいいから対局を再開したほうがよかったと思う。

 幸いコンピュータ将棋側にも256手ルールというのがあったはずであろう。
 森下九段が駒得のまま、あと50手ずつ指していけば250手に達するはずだ。
(そこまで指す前に森下九段が楽に入玉できる可能性が大きい。そのぐらいの大差はついている)
 ツツカナの考慮時間を入れれば結構長時間がかかるだろうが、256手まで指した上で立会人が再度対局を中断して、そこで判定勝ちを宣言すればいい。
 佐藤九段と中村六段がわざわざ出てきて「まあおそらくこんな感じになりますよねー」とか盤を使って説明して「やるまでもありませんよねー」みたいなのは、残念ながら蛇足だったと思う。
(まあお二人は連盟に頼まれて出てきたのだろうが)

 そして指し継ぎを行わない理由として「大差がついている局面なので、森下九段のほうにもここから再開するモチベーションがなくなってしまってる」というのも挙げていたが・・・

(おいおい、それ言っちゃっていいのかよ・・・あんたら将棋指すのが仕事だろ・・・)
・・・という思いが湧いてきた。ちょっと呆れてしまった。

 「これはプロの目から見たら大差です」とプロの立場からものをいうのであるならば、対局に対するモチベーションがないからこれ以上指したくない、なんてことは、絶対に言ってはいけない。これらは明らかに矛盾している。
 仮にその他もろもろの都合で対局が行えないとしても、
「森下九段は対局を望んでおりましたが、理事会で話し合った結果、指し継ぎは行わないということにしました。続きを楽しみにしておられた方々、大変申し訳ございませんでした」
 ・・・と。たとえそれが本意でなくとも、こう言わなきゃいけないだろう。

 要するに再開せずに、判定勝ちにしたことに対する正当性を証明するのに必死になるあまりに、棋士として一番大事な「将棋を指すことが仕事である」ということを、森下さんも片上さんも見落としてしまったんですね^^
 
(コンピュータ同士で100局指させて、100回とも後手が勝った?どんだけ時間と電気代の無駄遣いしてるの?さすがにそこまでプロ棋士の信用は落ちてないでしょ。
 むしろこんな保身のためでしかない会見してるほうが、将棋連盟の信用は落ちるんだよ・・・)
 
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電王戦FINALの前に思う(6) [将棋]

 内館牧子氏のエッセイに関して、先日2月3日に発売された将棋世界3月号に「お詫びと記事撤回のお知らせ」という文面が掲載された。
 民事訴訟とはいえ、こういった結論が出るのに1年以上もかかってしまうんだなあ、というのが半ばあきれた気持である。そもそも示談にしようと思えばもっと簡単に済んだ話だと思うのだが、いったいどうしたことだろうか。
 確かに伊藤英紀さんという方は、棋士に対する敬意がたくさんあるほうではない。だがしかし敬意がまったく感じられない、というほどでもなかったはずである。内館氏のような、将棋のことを大して知らないのに棋士を変に持ち上げようとする自称教養人(少なくとも自分のほうが教養があると思っているからああいう表現が出てくるのだろう)のほうが明らかに不自然だ。例の持将棋対局を取り上げるのであれば、みっともないと言われようがとにかく自分の持てる手段をすべて出し尽くして奇跡的に何とか引き分けに持ち込んだ塚田九段の根性や棋士としての意地をほめたたえるべきだろう。対局後のあの涙は、自分の持てる力をすべて出し尽くして戦った人でないと流せない涙だと、私は思うのだ。
 それにしても、もしかして本当に連盟内に「棋士は将棋ファンから尊敬されて当然だ」とか思っている人がいるのではないだろうか、と勘繰りを入れたくなってしまうような今回の記事にまつわる騒動であった。

 さて、電王戦FINALの第一戦まで残り1か月を切ったのだがニコニコ動画ではこの2か月ほど電王戦ドキュメンタリー電王戦FINALへの道という特集PVがupされ続けている。これは今までなかった企画なので楽しみに見ている。
 ただ、細かいことにこだわるようで申し訳ないが、「勝つのは人類か、それともコンピュータか」というフレーズは、ちょっと違和感を覚える。
 コンピュータ開発の歴史もやはり「人類の」歴史だ。旧ソ連とアメリカが競って宇宙探索をしだしたあたりからすでに始まっているだろうから50年以上は経っているはずである。
 将棋電王戦とはいうなれば「自分で次の一手を考えて指す人間」と「コンピュータを使って次の一手を探索させる人間」の戦いである。
 こういう風な書き方ををするといかにもソフト開発者が卑怯者であるかのように見えてしまう。
 しかしコンピュータ将棋というのもやはり、人間の知性の賜物であろう。現に我々はコンピュータの発展の恩恵を受けて生きてきている。ただ、すべての物事には必ず何かしら弊害が付きまとう。
 仮にすべてのプロ棋士が全くコンピュータ将棋に勝てなくなったとしたら、その弊害が将棋界に来ただけでのことである。
 もっともだからと言って将棋ソフト開発が害悪かというとそうではない。これだけIT開発が進んだ時代に強いコンピュータ将棋を作りたい、と思う人が出てきたところで何の不思議もないだろう。
実際将棋よりはるかに競技人口の多いチェスは、すでにコンピュータのほうが強いということを受け入れたうえで、今でも世界の人々に指し続けられている。
 
 棋士たちはこういう時代に棋士であることの宿命を受け入れて、自分たちのできることをやるしかないのではないだろうか。
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電王戦FINALの前に思う(5) [将棋]

 内館牧子氏が2013年の将棋世界7月号にこの「精神文化を学べ」というエッセイを記載した。第2回電王戦の第4戦目の塚田泰明九段とPuella・αの後に行われた感想戦(といっても実際に本来の感想戦をやるわけではないので、おそらく終局後の感想を取材担当の記者が塚田九段とソフト開発者の伊藤英紀氏にインタビューしたときのことを言っているのだろう)において伊藤英紀氏が「前の2局に比べると、最後はつまらない将棋になってしまった」という非礼な発言をしたことが塚田九段を泣かせた、という週刊新潮の記事を読んだ内館氏が「50にもなって教養がないなぁ、相手するだけ無駄だわ」等、批判というより中傷するような表現になっている。
 しかしそもそも内館氏は実際にこのときの様子をきちんとニコニコ動画のタイムシフト等で確認したのであろうか。見ていないのであれば、将棋世界の編集長なり将棋連盟の理事なりに依頼して映像で確認させてもらってから書くべきであろう。実際に塚田九段が感極まって涙を流したのは、伊藤氏が局後の感想を述べる前の話だ。
 そしてあるベテラン棋士が「棋士はつまらない将棋とは絶対に言わない」といったというのも根拠があまりない発言である。実際、自分の構想ミスのせいなどで自分にとって不本意な展開になった時に「つまらない将棋にしてしまった」という表現を用いることは普通にある。具体的な指し手そのものをいうのではなく、相手との一連の手順のやり取りののちに出来上がった局面を見て「つまらない将棋にした」と感想を述べるものだ。
 内館氏は伊藤氏の非礼さと対照的な例として囲碁の井山祐太六冠(当時)を引き合いに出しているが、これまた比較する対象としてはちょっと無理がある。井山六冠はその対局に勝っているのに対して、伊藤氏は「入玉対策がなおざりになった」せいで最終的に勝ちを逃して引き分けに持ち込まれたのである。自分のプログラミングが完全ではなかったことに対する反省の弁を述べたまでのことだ。塚田九段の指し方をバカにしているような印象は、少なくともこの時の発言からは受け取れないのである。

 しかし事実と違う週刊誌の記事ネタをうのみにして書いた内館氏はさておき、もっと問題なことは、この「精神文化を学べ」というエッセイが、そのまま将棋世界に載せられている、ということだろう。内館さんが詳しい事情を知らないのはまだ理解できるが・・・将棋世界って日本将棋連盟が発行している機関誌ですよね・・・編集長や谷川会長、その他の理事の方々はこのエッセイに関してまったくノータッチだったのだろうか。(常識的に考えてそういうことはあり得ない。おそらく内容をすべて承知の上で掲載したのだろうと思われる。)
 このエッセイを読んで不服を感じた伊藤英紀氏は、しばらくして弁護士を通じて将棋連盟に謝罪を求めたが、出版社に当たるマイナビは話し合いには応じたらしいが、将棋連盟のほうは話し合い自体しようとはしなかったようで、事態を重く見た伊藤氏は伊藤氏のブログ「A級リーグ指し手一号」にあるとおり、日本将棋連盟、株式会社マイナビ、内館牧子の三者を名誉毀損で提訴したのだった。
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電王戦FINALの前に思う(4) [将棋]

 将棋電王戦という企画が始まってから「将棋のプロとコンピュータの戦い」という視点で、将棋専門のテレビ番組以外でもこの話題が取り上げられるようになった。電王戦はニコニコ生放送で全局が生中継されるということもあって、「近年は将棋から遠ざかっていたが、この電王戦を機会にまた将棋を楽しむようになった」という人もいるようである。また去年の夏ごろにはNHKEテレの「サイエンスZERO」で第3回電王戦の大将戦である屋敷九段対ponanza戦に注目しながら、コンピュータ将棋がいかにして進化を遂げてきているのかが科学技術的な観点から放送されていた。

 このように新たな形で将棋という分野が脚光を浴び始めていることは将棋界にとって望ましいことであると思うのだが・・・どうも現実はそう単純ではないようだ。この現実を好ましい状況だと思ってない人々もいる。理由は明白で、プロ側が負け続けていることである。
 熱心な将棋ファンやプロを目指して将棋教室に通っている子供たちにとって、プロ棋士とはリスペクトされる対象である。一昨年、羽生名人が通算獲得タイトル数を史上最多の81にしたとき特集番組が組まれたが、取材を受けた新聞記者の一人が「棋士の多くは一生のうちタイトルを一度とるだけでも大変なことなのに、それを毎年何個も取り続けている羽生さんはまさに天才中の天才です」というような答えをしていた。
 その天才集団と称されていた棋士たちが、時代の流れとはいえ、神でも妖怪でもない、一台の機械相手に苦戦を強いられて来ているのだ。心中穏やかではない将棋関係者もいることだろう。中には将棋ソフトの開発者のことを疎ましく思っている人たちもいるのではなかろうか。
 
 そうした人々の心情が、将棋連盟が発行している「将棋世界」に内館牧子氏のエッセイという形を借りて公表されたのである。
「精神文化を学べ」
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電王戦FINALの前に思う(3) [将棋]

 さて今回で5対5の団体戦として行われるのは最後であるということだが、第3回の電王戦の最終局のあとに行われた共同記者会見の場において、第4局の対局者であった森下卓九段が次のような発言をした。
「時間切迫や長時間の対局からくる疲労などによって、人間側はどうしてもミスをしやすい。勝負として負けるのはしょうがないとしても、その結果をもって将棋の技術そのものがすでに将棋ソフトのほうがプロ棋士よりも上である、と思われてしまうのは悔しい。人間側がヒューマンエラーをできるだけ少なくするようなルールで対局させてくれれば、まだまだプロ棋士も強いというところを証明することができるのではないか」
 そういって提案したルールが持ち時間が切れたら一手15分以内に指す、そして人間側は読みを確認しやすくするために対局室内に別な盤駒を用意して動かしていいというルールであった。

 まあこれを真剣勝負として見るかどうかは異論があると思う。よく詰将棋を解くときにプロがアマチュアにアドバイスするのが「問題を盤に並べるだけならいいですが、駒を動かしながら考えるのは待ったをしているのと同じですから読み切るまでは動かさないようにしましょう」ということだ。これは必至や次の一手問題にも言えることで、強くなるために御法度とされている行為をコンピュータに勝つためにプロが自らさせてくれ、といっているのだから相当な抵抗があるだろう。
 しかし人間同士の対局のルールをそのままコンピュータとの対局に持ち込むのはおかしいだろう、というのがいかにも理論派の森下九段らしい考え方である。厳密にいえばコンピュータでも指し手が幅広い局面では読み抜けをしていることがあるのだが、それでも人間が犯すミスの頻度に比べたらはるかに少ないのは事実だ。読みのスピードもコンピュータのほうが圧倒的に速い。
 そこまで言うなら実験的に本人にやってみてもらう価値はありそうだ、ということになって先日行われたのが大晦日の電王戦リベンジマッチであった。ただし秒読みに関しては一手につき双方10分というルールで行われた。
 これはある意味斬新的な企画であり、対局者の読みを継ぎ盤に再現するだけではなく、森下九段にマイクを付けて音声で視聴者に説明をしていた。人間同士の対局ならば相手に自分の読み筋を伝えてしまうことになるので絶対にありえないことを、コンピュータが相手であるという点を利用して実現させたのだから、イベントとしては面白いものだったと思う。
 対局の内容のほうも、コンピュータが得意とされている終盤において森下九段が放った勝負手に(実際はむしろツツカナの読みを上回った好手であった可能性もある)ツツカナがミスをして、森下九段がかなりの優勢になった。時間と心理的に余裕がある条件下ならば、人間が圧倒的に不利だと思われていた終盤でも逆転することができる、ということが証明されたという点では有意義であっただろう。
 ただ残念なことに土壇場に来て、ある程度予想されていた事態が起こったのである。・・・午前十時に開始された対局が持ち時間3時間を使い切ったら双方一手10分というルールのために、翌日の午前五時を過ぎても終わらないのである。
 局面自体は素人目でも後手の森下九段がかなりの優勢ではあるのだがツツカナ玉も簡単には寄らない状態だ。ソフトは基本的に自玉がはっきりと受けがないという状態になるまでは投了はしないものであるから日付が変わったことなどお構いなしに一手につき10分ぎりぎりまで考えてくる。一方の森下九段も優勢であるもののまだまだ油断はならぬと慎重に負けないようにと時間を使って指し続ける。特に午前3時を過ぎたあたりから森下九段のほうに寄せを読み切るという余裕がなくなってきてしまってより一層安全勝ちを目指す傾向が強くなってきたのである。前日の夕方まで解説していた佐藤康光九段が「いやーかなりじっくりとした将棋になってますから・・・明け方までに終わりますかね・・・」と心配していたのだが、それがまさに図星となってしまったのだ。

 結局5時20分ごろ後手の森下九段が△2三金と指した時点で立会人である片上六段が対局場に現れて森下九段と交渉をして時間の都合で指し掛けとして、日を改めて指し直しということになったようだ。森下九段としてはこのまま指し続けろと言われればぶっ倒れるまでやる、とは言っていたものの、実際そんなことになったらそれはそれで一大事である。そういう事態を回避した立会人の判断は間違ってはいない。ただ問題だったのはそのあとの片上六段の説明内容である。
 「まあ多少は長くなるだろうとは思っていたんですけれども、棋士をはじめとする運営スタッフがこういうことになるとは想定していなかったもので、このまま対局を続行するのはちょっと厳しいということになりまして、申し訳ないのですが指しかけということにさせていただきます」

 「想定してなかったって・・・おいおいそれはないだろうw」と突っ込みを入れたくなったのはおそらく私だけではないはずだ。今回の対局は途中に昼食休憩と夕食休憩があり、さらに三時間ごとに30分の休憩をとるルールとなっている。お互いに持ち時間3時間を使い切ったとして秒読みになるのは夜の7時ごろであるが、1手につき10分まで考えるとしたら一時間で最低6手しか進まないことになる。中終盤が60手続いたとすれば最悪10時間を費やすということになる。実際ツツカナも森下九段も秒読みになってから指した時間のほうがはるかに長かったのだ。コンピュータ側だけは一手一分以内に指すように設定するとかでもしない限り、森下九段が疲労困憊となってしまうことは予測可能なことだったのだ。だからこのルールでやる以上、たとえば24時までに終わらなかった場合は封じ手にして後日指しつぎにする、等の条件を最初から決めておけばよかっただけの話だ。
「先を読むことが商売のはずの棋士が、何みっともない醜態をさらしているのかね。片上君」
 あるいは天国で大山先生あたりが呆れ果てているかもしれない。
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電王戦FINALの前に思う(2) [将棋]

さて第3回のようなレギュレーションを設けてプロ棋士対将棋ソフトの対戦を行ったわけだが、結果は1勝4敗でプロ側の負け越しとなった。第2回と違う点で特にプロ棋士サイドに有利な点は、やはりソフトの事前貸出の義務付けられたこと、そして決められた貸し出し期間中に開発者側はソフトの改変を行ってはいけない、という点であろう。最終的にこのレギュレーションが決められる前にソフト開発者たち何人かにこの点についてドワンゴ側が話を聞いたそうだが、「いやしかしそれだと研究発表会みたいになってしまうから面白くないのでは」ということになったそうである。開発者側からすると、いくら強くなったといえども、人間と同じ思考で将棋を指しているわけではないので、まだまだそれなりに欠陥はあるようで、そこを事前に知られた上で対策を研究されたら、確かに真剣勝負という意味合いからすると面白みは欠けるということになるであろう。
 しかし同じ将棋を指すにしても、人間が指すのとコンピュータソフトが指すのでは感覚や性質が違うところがある、というのは周知の事実となっており、やはり主催者側としては対戦するソフトの性質なり傾向なりを十分に研究して本番に備えてもらいたい、そしてできれば、プロ側に勝ってもらいたいという意向から、最終的にこのレギュレーションを決定したのだろうと思う。
 ソフトサイドからすれば「勝負の主催者がどちらか一方の肩を持つとは何事か」と思うべきことであろう。しかしそもそも人間とコンピュータの将棋対戦で何を持って「対等な条件下での対戦」と呼ぶべきなのかが、極めて難しい。それに人間側は全員プロ棋士である以上それなりの権威があるわけで、その権威をスポンサー側が保護しようとする意識が多少働いたとしても致し方ない面もあるのではないだろうか。

 ただ、思うにこういう提案はもっと前から、少なくとも清水女流六段があからと対戦するあたりからなされてもいい問題であったと思う。ところが実際に、今回のようなレギュレーションが決められたのは去年が初めてであった。
 要は将棋連盟が・・・つまりはプロ棋士達がコンピュータソフトの進歩を甘く見過ぎていただけなのである。
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電王戦FINALの前に思う(1) [将棋]

少々期間が空いて(空きすぎて)しまったが、また将棋電王戦のことについて思うところを書いていきたいと思う。

 さて今年の春に行われた第3回電王戦は既報のとおり、プロ棋士側から見て1勝4敗という成績であった。
 第3回のルールにおいては、コンピュータ側が対戦時に使用するハードを統一(主催者側が用意する高スペックPC1台)し、更にソフト開発者はそれぞれの対戦棋士にソフトを少なくとも3か月前までに貸し出す義務が有ることになった。
 貸し出している間は開発者たちはソフトを改変したりすることはできない。つまりプロ棋士にあらかじめ当日の対戦ソフトと練習対局なりソフトの傾向などを研究する期間を十分に与えて、本番の対局に備えてもらいたいという主催者側の配慮であるとのことらしい。
 まあ勝負という観点からすれば「それではプロ側が有利なのでは」という意見が出てきそうである。しかし以前にも述べたとおりソフト開発の技術は日々進歩しており、そうした現状の中で棋士とコンピュータが対戦するということになるとこのぐらいの条件を用意しておかないと、生身の人間であるプロ側にはかなり過酷な勝負であるから止むを得ないであろう。何よりプロはプロとして出る以上は「勝ち」という結果が求められるのだから。
 
 ・・・ただ、残念なことに結果は出なかった。豊島七段がYSS将棋に内容的にも完勝したのだが、それ以外は全てコンピュータの勝ち。
 その勝った豊島七段も、本番当日までに1000局に近いぐらいの対戦をソフトとこなしたという話である。現在羽生王座に5番勝負で挑戦中の豊島七段だが、近いうちにトッププロになるであろう実力者と言われている彼が、これほどの準備をして臨まないと現在の最強レベルの将棋ソフトには勝てないのだということが、改めて驚異的な事実として知られることとなったのである。
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実戦と詰将棋 [将棋]

 昨日、関西将棋会館の駒桜イベントに行ってきました。
 基本的に関西の女流棋士が中心になって行っていますが、ゲスト棋士として福崎文吾九段と山崎隆之八段も来ていて、単なる若い女流棋士目当て(笑)じゃない人も十分楽しめる将棋イベントなっていたと思います。
 他に姿を現した男性棋士は、イベントの合間のティータイムの時間になるとひょっこり出てきて準備をしていた糸谷哲郎六段。棋士室に来訪するときには必ずスイーツを差し入れしてくれる、と評判の糸谷さんですが、昨日も期待を裏切らずに姿を見せてくれました。もはやスイーツ係の糸谷さん(?)ってことになっているのかもしれません。
 
 さてかくいう私もせっかくだから抽選で指導対局を、と思っていたら午後の指導対局でモリノブ門下の室谷さんに指導してもらうことになった。駒を並べている間に手合いを考えていたが、三面指しの他のおふたりが「平手」と「二枚落ち」だったのでじゃあ私は中間をとって角落ちに、ということで対局開始。
 私の棋風のせいもあって序盤でのんびりしていたらちょっと上手に十分に組ませすぎてしまって、下手としてはやや不本意な感じになってしまったが、とにかく遊び駒のないように心がけて指すようにしていたら、上手の攻めに乗じて反撃したのが功を奏したようで、図の局面では既に下手が勝勢に。
BANTmuroya1.png

 まだこちらには一手余裕があるようで、詰まさなくても受けがないように寄せればいいなと考えていたのだが、よく読んでみると・・・うまい詰みがあるではないか。対局中に思わず「あれ?」っと声を出してしまっていた。(室谷さんどうも失礼しました)
 
 ▲4二金△2三玉▲3二銀△1二玉▲2三金△同金▲2一銀不成△同玉▲3二飛成 まで下手の勝ち
BANTmuroya2.png
  
 「いやー、2三同金を、銀でとってくれたら飛車効いてるからつまないって思ってたんですけど・・・詰将棋みたいな詰みでしたね^^参りました。」
 投了後の室谷さんの言葉である。てっきり3三金は形作りをしてくれたのかと思っていたが途中までは向こうも気がつかなかったようだった。
やはり実戦だと詰将棋のようには詰みが見えないことがプロでもあるものだと、改めて感じた将棋だった。

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将棋ソフトの進歩と将棋界(5) [将棋]

 正直なところ私は、仮に森内名人や羽生三冠が、三浦九段と同じ条件でGPS将棋と指して負けたとしてもそれほど驚くことはないだろう。もちろん勝てる可能性だって十分にあると思うが。
 実際羽生さんが公式戦で三浦さんに負けたことだって何度かあるわけだ。だからコンピュータ側が最大限に実力を発揮できるような条件で戦えば、羽生三冠が負ける可能性は十分にあると思う。
 少なくとも10年前までは最強のソフトといってもアマチュア四、五段レベルがいいところで、プロに平手で勝つにはまだまだ、みたいなのが将棋界の共通認識だった。
 おそらくBonanza開発以降の急激な技術進歩の流れにプロ棋界自体がついていけないのだろうと思う。
 
 もちろんコンピュータ将棋側にもまだまだ改善するべき課題が残されている。
 例えば入玉模様の将棋になった時に、無意味に成り駒を作ったりするような傾向があったり、あるいは序盤に棋士なら当然第一感でわかるような一手を指さなかったりすることがある点だ。
 ただこれらを指摘して「プロより強いだとか互角だとかとんでもないよ」という意見を、プロ棋士を応援する将棋ファンがいう分にはわかるのだが、プロ棋士自体が言ってしまっている場合があるのがどうも理解できない。
 そういうことを言っているプロ棋士の方に言いたいのは「だったらあなたは、相手玉に詰みがあった場合は全て一瞬にして詰ますような技術があるのですか?」ということだ。要するにプロ棋士側にもコンピュータ側より劣っている部分はたくさんあるということだ。将棋ソフト開発者側がプロに相当近いところまで来ている、と言っているのはそういうところも全てひっくるめて総合的に見て、という話だ。ボンクラーズ開発者の伊藤英紀氏の「もう名人を超えていると思う」発言もそういう観点から来ているのだろう。

 ただ、私が言いたいのは別にトッププロがコンピュータに負けたからとて、具体的になにかまずいことでもあるのだろうか、ということである。トッププロがコンピュータに負けたということは、それだけ将棋プログラミングの技術が進んだということ、そしてそれを利用可能にするだけハードウェアの性能が向上したということを意味するのである。そもそも機械と人間が全く同じやり方で将棋が指せるはずがない。何十万局の棋譜データをもとに、考えられうる局面をしらみつぶしに猛烈な速さで探索して次の一手を指させる等というのは、人間の脳では出来るはずもなく、完全に次元が違うものだ。そうしたことを考慮してもそれでもなお、プロ棋士の方が強いと思っていたこと自体が幻想だということなのだ。

 棋士たちは普段公式戦を戦っているのだが、これは当然人間相手の戦いであって、女流棋士も奨励会員も人間との将棋に勝つために研究や実戦練習を行っているのである。そこに電王戦のような、次元の違う新たな戦いが組み込まれてきてしまったのは、正直なところプロ棋士の方にはちょっと同情したくなる気持ちがある。
 だが一将棋ファンとしては、せっかく電王戦のようなイベントを行うのであるなら、コンピュータ側のPCに制限を設けるようなことはしないでほしいと思う。現時点では使用するハードにより高い棋力が出せるソフトがあることは事実なのだから、それを避けてしまうということ自体がコンピュータ将棋に対する偏見だと思うのだ。コンピュータ将棋は別にプロ棋士の存在を陵辱することが目的ではないのだ。純粋にどこまで将棋が強くなれるか・・・。それを棋士と開発者がお互いに目指して戦えば良いではないのだろうか。 そういう真摯に将棋に取り組む姿を大勢の将棋ファンに見せてもらいたいのである。
(終)
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将棋ソフトの進歩と将棋界(4) [将棋]

さて現役A級棋士の三浦九段(電王戦の対局当時は八段)がいいところなく負けたのだから、今度はプロ棋士側も五人でやるのだからかなり強いメンバーを出してリベンジマッチを見せてくれるだろうなあ、と期待していたら、どうもそういう話にはならなかったようだ。今年の10月半ばに第3回電王戦を行うという発表があったのだが、プロ側が選出した棋士5名は、屋敷九段、森下九段、豊島七段、佐藤紳哉六段、菅井五段というメンバーであった。
 この5人のメンバーを見て率直に思ったことは、確かに現在順位戦のB1で単独一位の成績で来季A級昇級を決めそうな勢いの豊島七段と、やはり若手で高勝率を上げている菅井五段の二人を入れてきたのは前回よりは本気だよ、という感じを受けるのではあるが・・・それ以外は前回と変わり映えがしない印象を受けた。屋敷九段はA級棋士で元タイトル保持者の実力者であるが位置づけ的には三浦九段と同じだと見れるし、森下九段は元A級棋士でかってはトップクラスとしのぎを削っていた実力者、ということで塚田九段と同じ位置、そして佐藤紳哉六段は・・・まあエンターテイメントとしては魅力たっぷりの人気棋士であることは認めるが、純粋に棋力だけを見ると長いことC級2組に在籍している棋士であるから、前回の佐藤慎一四段と同じ位置づけである。まあ前回よりは少しレベルアップしてはいるのは事実であろう。
 一方のコンピュータ側には出場する際に条件がついた。対戦の時に使うハードをどのソフトも統一のPCを使う、ということになったのである。(PCは主催者のドワンゴ側が用意する)
 これにより前回出場したGPS将棋とPuella αは複数のPCをクラスタ処理させて対局していたので、今回は参加しないことになったようだ。
 この規定に対し主催社ドワンゴの川上会長は「今回は純粋にソフトの棋力で戦って欲しいという意図でPCを統一しました」とコメントしていたがその際に例の口調で「まあーあのー、前回はあまりにもコンピュータに有利すぎたので今回はー」というような話をしていた。
 
 どうもニコニコ生放送の電王戦のPVを以前から見ていて気になることがあった。それはやたらと「人類対コンピュータ」という図式を強調していることである。私はてっきりあれは、放送を面白くするための演出であると思いながら見ていたのだが、どうやら結構本気でそう思っている人たちが多いということに気づかされた。もちろん実際に正式な対局として観客の前で将棋を指すわけであるから、棋士として最善を尽くすのは当然であるが、それを通り越して「今回は絶対に人間側が勝たねばならぬ」という雰囲気が作り上げられているような気がするのだ。実際プロ棋士の中にも「コンピュータになんか絶対負けたくない!今まで必死になって取り組んできたことを全否定されてしまうようなもんだし」と本気で思っている方が結構いそうだと、ネットで色々と得た情報から感じた次第である。
 
 だがそもそもそういった考えにとらわれること自体が、くだらない幻想なのではないか、と私は気づかされたのである。
(続きはまた次回に)
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